膝窩動脈瘤・膝窩動脈外膜嚢腫・
膝窩動脈捕捉症候群
Popliteal Aneurysm, Adventitial Cyst, and
Popliteal Entrapment Syndrome

膝窩動脈瘤・末梢動脈瘤

末梢動脈瘤は膝窩動脈瘤が最も多く、動脈瘤に沈着した血栓が遊離して膝下~足部動脈塞栓症を発症し足趾切断、重症の場合には膝下切断となるので、無症状であっても発見され次第手術を行います。
手術は膝窩動脈瘤が開存している場合は瘤切除と下肢静脈による置換、血栓閉塞している場合はバイパス術が行われます〈図 1, 2〉。置換またはバイパスを行う上で下肢静脈を用いる場合は治療成績は良好です。

膝窩動脈外膜嚢腫

膝窩動脈外膜内にゼリー状の物質が貯留し、血管を圧迫・閉塞させる疾患です〈図1〉。比較的若年者に多く見られます。
初発症状は間欠性跛行であり、閉塞が進行すると歩行可能距離が短くなり、さらに重症虚血肢に至る場合もあります。
手術では、膝窩動脈が圧迫されていても動脈内膜に病変がない場合は、嚢腫摘除を行います。内膜病変がある場合には、膝窩動脈を温存しても再閉塞の可能性があるため、嚢腫を含めて膝窩動脈を切除し、バイパス手術を行います。膝窩動脈を温存して嚢腫を切除する方法は、完全に摘除する手技が難しいものの、うまく切除できれば本来の膝窩動脈を残すことができるため、最善の方法といえます1
進行した大きな嚢腫は血管外に及んでいることが多く、完全に摘除することは必ずしも容易ではありません。嚢腫の壁が一部残存した場合には再発・拡大することがありますが、重大な圧迫症状を生じることはありません。

  • Kikuchi S, Sasajima T, Kokubo T, Koya A, Uchida H, Azuma N: Clinical Results of Cystic Excision for Popliteal Artery Cystic Adventitial Disease: Long-term Benefits of Preserving the Intact Intima. Ann Vasc Surg 2014; 28:1567.e5-8.

膝窩動脈捕捉症候群

胎生期の発達異常により、膝窩部で腓腹筋内側頭の付着異常や形成異常、膝窩筋の付着異常などが生じ、その結果、膝窩動脈が膝窩部で圧迫され、狭窄・閉塞をきたして〈図5〉、下肢虚血症状を発生します。

本疾患は若年男性(平均年齢32歳、男性が80%以上)やスポーツ選手に多くみられ、初発症状は間欠性跛行です。約30%の症例では両側性に発生します。特徴的な所見として、安静時には足背動脈の拍動を触知しますが、足関節を背屈すると足背動脈拍動が消失します。

膝窩動脈に異常が及んでいない場合は、異常筋の腱膜切離を行います。動脈に異常が発生している場合は再閉塞の可能性が高いため、膝窩動脈置換術を行います。術後経過は良好です。