血管炎症候群

動脈閉塞症を引き起こす疾患には、動脈硬化症以外にも血管炎があります。
さまざまな原疾患によって血管炎が生じ、これらは血管炎症候群としてまとめられています。

この中にはバージャー病、膠原病関連血管炎、大動脈炎、抗リン脂質抗体症候群による血栓症などいろいろな病気が含まれ、決してめずらしい疾患ではありません。

膠原病関連血管炎

膠原病
  • 関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis = RA)
  • 全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus = SLE)
  • 全身性強皮症(Systemic Scleroderma = SSc)、限局性強皮症
  • 皮膚筋炎(Dermatomyositis = DM)/多発性筋炎(Polymyositis = PM)
  • 結節性多発動脈炎(Polyarteritis Nodosa = PN)
  • 混合性結合組織病(Mixed Connective Tissue Disease = MCTD)
膠原病類縁疾患
  • シェーグレン症候群(Sjögren Syndrome = SjS)
  • 多発血管炎性肉芽腫症(Granulomatosis with Polyangiitis = GPA) (旧称:Wegener 肉芽腫症)
  • ベーチェット病(Behçet disease)
  • 巨細胞性動脈炎(Giant Cell Arteritis = GCA)

これらは足関節周囲の動脈閉塞症から足趾壊疽を発生します〈図1〜5〉。足部血行障害により主に趾壊疽を発生しますが、疼痛が強く保存的治療に耐えられない場合が多く、血管移植手術(下肢静脈を用いるバイパス術)による血行障害の改善が必須です。閉塞部位の特徴から膝下膝窩動脈から足部動脈(足背または足底動脈)へ下肢静脈がバイパス移植され、劇的な効果を発揮します。カテーテル治療は治療成績が悪く、悪化させる場合が少なくないため実施すべきではありません。

図1
図1. 全身型強皮症
42才/女性
右膝下動脈閉塞による足趾壊疽右総足底動脈バイパス(矢印:吻合部)により下肢救済

手術前の準備

手術にあたり膠原病の治療が重要なため、膠原病内科や膠原病皮膚科との連携が重要です。

膠原病に対してステロイド治療や免疫療法が行われている場合が多く、血栓傾向にあるため、血液凝固系や血液凝固異常に関する検査評価が必須です。そのため、抗凝固療法の併用が不可欠となります。

また、ステロイド治療を継続してきた患者さんでは、手術侵襲による膠原病の増悪を避けるため、ステロイド剤の術前大量投与を行います。通常、術前日にプレドニン30mgを投与します。

急性血栓症で発症した場合は、抗リン脂質抗体症候群の抗体検査が必要です(後述)。抗体陽性の場合には、血漿交換などの強力な術前処置が必要となります。

抗リン脂質抗体症候群aPS: antiphospholipid antibody syndrome

aPSには抗カルジオリピン抗体(aCL)とループス抗凝固因子(LA)があります。これらが抗凝固因子を抑制・阻害することで血栓症を発生します。

aPSには原発性と続発性があり、原疾患が特定できない場合は原発性、全身性エリテマトーデス(SLE)やその他の膠原病などに伴う場合は続発性と分類されます。

下肢急性動脈閉塞症や深部静脈血栓症などを発症し、血行再建が困難な病態です。aPLによる血行障害は重症急性動脈閉塞症として発症することが多く、下肢動脈閉塞症では高率に大切断に至ります。

血管移植手術を含むあらゆる治療に抵抗性であるため、下肢救済には高度な治療ストラテジーが求められます。しかし近年、ようやく有効な治療法が見いだされつつあり、救済が可能となっています〈図6〉。

図6
図6. 抗リン脂質抗体症候群による下肢急性動脈閉塞症

57才/男性/両下肢急性血栓症

  • 両下肢壊死/急性血栓症
  • 右下肢は腓腹動脈へのバイパスにより膝下切断が達成された(矢印)
    左下肢は足底動脈バイパスにより足部が救済された(矢印)

レイノー症候群

手指、足趾の血管が交感神経の過緊張により高度に収縮し、指趾への血行障害を生じる疾患で、手や足が紙のように蒼白になった後、真っ赤に発赤、または紫色に変化します〈図7〉。これをレイノー現象といい、多くは一過性で数分から数時間で元に戻ります。

レイノー症候群には2つの形があり、手指・足趾に血管病変がなく発生する場合を Spastic Raynaud(SR:攣縮性レイノー)、手指または足趾の血管に閉塞病変があって発生する場合を Occlusive Raynaud(OR:閉塞性レイノー)〈図8〉といいます。

いずれも何らかの基礎疾患を背景に発症し、膠原病(MCTD、SSc、SLE、SjS、PN など高率)では OR、バージャー氏病、TOS(胸郭出口症候群)などでは SR がみられますが、原因不明の例もあり、その場合はレイノー病と呼ばれます。いずれも原疾患が存在する場合には、その治療が優先されます。

SRでは寒冷やストレスを避けることで発症を予防し、必要に応じて血管拡張薬を内服します。通常、指潰瘍を形成することはありません。

ORでは、膠原病により指微小血管の閉塞を伴う場合に指潰瘍を形成し、難治性となります。いずれも保存的治療が優先され、交感神経切除術の適応は極めて限定されますが、高度の SR では指交感神経切除術が適応となることがあります。

図7
図7. Spastic Raynoad(攣縮性レイノー症候群)
  • Purple Raynoad(紫レイノー)
  • White Raynoad(白色レイノー)

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