透析用シャント造設手術は、血管外科のトレーニングを受けた医師にとっては容易な手術ですが、専門的訓練を受けていない場合には容易とは言えません。そのため近年は各国において、血管外科医がシャント造設を担当する傾向にあります。
また、シャント不全に対する修復手術の重要性が十分に認識されていないことがあり、適切な血管外科手技により再利用可能となる症例も少なくありません。
当科では、新規シャント造設のみならず、シャントトラブルにより透析が不能となった症例に対するシャント修復手術も行っています。
シャント不全に陥った場合、修復手術が行われず、腕のより中枢側へと繰り返し作り直され、それが使用不能となると反対側の腕(利き腕)に造設され、同様の経過をたどって最終的に外シャントのまま生活されている患者さんもいます。
さらに問題となるのは、下肢の大腿動脈―静脈間にシャントを作成されている症例です。下肢血行障害が存在する場合には足趾壊疽を発生するため、この方法は実施すべきではありません〈図1〉。
このような症例に対して血管外科手技を用いた修復手術を行えば、シャントを容易に再利用できるようになります。さらに血管移植手技を併用することで、従来は困難と考えられていた肘より末梢側への再造設も可能となります。
人工血管を用いるシャントは造設自体は容易ですが、合併症発生頻度が高いため最終手段として実施します。その方法には、動脈―静脈間シャントのほかに、動脈―動脈間シャントとして腋窩動脈にループ状人工血管を埋設する方法もあります〈図2〉。
61才/男性/糖尿病・透析/右虚血性足趾壊疽
下肢動脈閉塞症は大腿動・静脈間シャント(矢印)により下肢虚血が悪化する
透析用シャントトラブルの原因
- シャント狭窄・閉塞
- シャント流路の拡張による瘤化(こぶを形成する)
- 手指の血行障害による潰瘍・壊疽〈図3〉
- 上肢腫脹 中枢静脈の狭窄による静脈うっ滞
- シャント人工血管の感染
シャント自体は機能していても上腕動脈閉塞〈図3〉や前腕~手指の動脈閉塞症〈図4〉が発生して手指の潰瘍・壊疽を来すことがあります。難治性で感染を合併する場合もあり〈図4〉、容易には治癒しませんが、手指は動脈閉塞が発生しても保存的局所治療により自然治癒する場合が多いため手指の切断〈図5〉は行うべきではありません。
- 上肢動脈閉塞症による手指の血行障害・潰瘍壊疽の発生
- 血管移植手術により手指壊疽治癒
いずれも適切な治療が行われれば再利用や同側前腕に新規作成が可能であり、再三のシャントトラブルで透析に支障のある方は血管外科による適切な治療を受けるべきです。
以下にシャントトラブルと治療およびその治療の利点と欠点を表にまとめました。
| 異常 | 治療法・修復法 | 利点 | 欠点 |
|---|---|---|---|
| シャント狭窄 | カテーテルで狭い部分の拡張 | 手術簡単 | 再発・不確実 |
| 手術で狭い部分を拡張 | 確実 | 局所麻酔手術必要 | |
| シャント閉塞 | 限局性閉塞ならば形成手術 | 手術簡単 | 不可能例あり |
| 血管移植でシャント作成 | 不可能例なし/確実 | ー | |
| 自己血管移植 | 長持ちする | 全身麻酔・血管採取 | |
| 人工血管使用 | 簡単/局所麻酔 | 再閉塞率が高い | |
| 動脈間人工血管ループ作成術〈図3〉 | 心臓負担がない/不可能例なし | 手術が比較的複雑/透析中薬剤注入不可 | |
| シャント静脈瘤 | 上腕に作り直す | 手術簡単 | 巨大ならば作り直し |
| 反対の腕に作り直す | 手術簡単 | 他側に作り直し |