糖尿病足壊疽の大切断を回避する治療 血管外科医 笹嶋唯博 MD,PhD. Tadahiro Sasajima MD,PhD.

足趾壊疽は血管移植手術により確実に下肢が救済されます。

糖尿病壊疽に対する血管移植手術は、足首以下(足の甲または足の裏)の
太さ1mm前後の細い動脈に血管が移植されます。
糖尿病・維持透析例の足趾壊疽の詳しい説明はこちらをご覧ください。

トピックス

膠原病関連血管炎による足趾壊疽

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  • 図1A:カテーテル治療前の血管造影
  • 閉塞部(→)にカテーテル治療が行われた。足底動脈(赤→)は血管移植手術のための 重要な血管。

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  • 図1B:カテーテル治療後
  • カテーテル治療後足底動脈を含めて全て閉塞

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  • 図1C
  • カテーテル治療後、壊疽が急拡大したが、血管移植手術による下肢救済が不可能になってしまった例

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  • 図2A:血管移植により下肢救済が達成された。
  • 血管移植手術。足の裏の血管(足底動脈)へ血管移植。(赤→)移植血管。

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  • 図2B:血管移植前
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  • 図2C:血管移植後壊疽部完治

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膠原病で足壊疽を発生することがあります。
これは膠原病に伴う血管炎が主に足関節周囲の動脈を閉塞させるために起こる足部血行障害によるものです。

足趾壊疽を発生する膠原病・類縁疾患

足部への動脈が閉塞して足趾壊疽を発生するものには、全身性硬化症(強皮症)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病などが挙げられます。
動脈閉塞病変は下腿下1/3から足部の血管に発生し、いずれも同じような閉塞病像を示します。これらは膠原病関連血管炎といわれますが、今は高安動脈炎、バージャー氏病、ベーチェト病、ヘノッホ・シェーライン紫斑病など共に血管炎症候群として包括されています。

誤った治療

これらに対し近年、カテーテル治療が無定見に行われ足趾壊疽を拡大させて大切断に至っている悲惨な例が多数経験されます。
この疾患はストレスにより高度の血管攣縮を発生します。これはレイノー現象といわれ、安易に侵襲を加えることは大変危険です。
それを知らずにカテーテル治療が行われている現状がありますので、動脈閉塞症の原因が膠原病あるいは疑いと診断された場合、カテーテル治療は決して受けるべきではありません。カテーテル治療の血管傷害による急性動脈血栓症で手術ができなくなってしまう例があります(図1A,B,C)。現状は医師の知識が不十分で阻止できない状況にありますので患者さん自身が誤った治療は受けないように十分注意するしかありません。

正しい治療

血管炎による動脈閉塞に対してはバイパス手術(血管移植手術)が第一に選択されるべきで、これにより壊疽は容易に治癒に向かいます(図2A,B,C)。多くは血管移植手術が可能ですが、図2の例の様にカテーテル治療で血管が傷害された場合は救済できない例もあり得ます。また外科医と言ってもこの手術ができるとは限りませんので、その場合には他を探す必要があります。当方で手術を行う患者さんのほとんどは前医でカテーテル治療を受け、それが上手く行かずに切断宣告を受け、患者さん自身が救肢手術を求めて来院します。

2013〜2019年までの6年間の治療成績

6年間で全国から来院された504例、616肢に下肢救済手術を行いました。

※数値は例数

504例の内訳
大切断例数 5年救肢率 手術死亡率
28 99.4% 3.8%
原因疾患の内訳
大切断
例数
閉塞性動脈硬化症(ASO) 449
糖尿病 366
(73%)
24
血液透析 280
(56%)
バージャー病(TAO) 10 0
膠原病随伴血管炎 14 1
膝窩動脈外膜嚢腫
・捕捉症候群
7 0
末梢動脈瘤
・膝窩動脈瘤
6 0
血管外傷 4 1
急性動脈閉塞
(血栓症・塞栓症)
14 2
虚血重症度(616肢)
間欠性跛行 81(13%)
安静時疼痛 45(7%)
小潰瘍/壊疽 214(35%)
広範壊疽 274(45%)
北海道
1
青森県岩手県
32
宮城県山形県
12
福島県
3
新潟県富山県
12
石川県
1
茨城県栃木県
101
群馬県埼玉県
342
千葉県神奈川県
7825
江戸川区東京他区
115151
山梨県静岡県
311
愛知県岐阜県
92
三重県奈良県
21
大阪府兵庫県
142
岡山県広島県
32
島根県
1
香川県愛媛県
12
大分県長崎県
11
鹿児島県
1
沖縄県
3
中国
1
シンガポール
1