糖尿病足壊疽の大切断を回避する治療 血管外科医 笹嶋唯博 MD,PhD. Tadahiro Sasajima MD,PhD.

コレステロール塞栓症

コレステロール塞栓症

糖尿病およびそれに伴う動脈硬化性動脈疾患の増加により、動脈内面は高度の粥状硬化性変化を来し、動脈壁内にコレステロールが堆積し(粥腫)、多数の粥腫がいわば火山の噴火口のように内腔に盛り上がって内部のコレステロールが顔を覗かせる(shaggy aorta or shaggy artery ぎざぎざの大動脈や動脈:図1)。堆積したコレステロールはついに噴火すると無数の微小コレステロール粒子が血中に流れ出して、末梢終末微小動脈を詰まらせる。最も顕著なのは足趾コレステロール塞栓症で、突然足趾の痛みで発症し、足趾は紫色に変色して激痛を発し(図2A)、趾は壊死に陥る(図2B)。 この病気にはいろいろな名称がある:
コレステロール塞栓症
 =アテローム塞栓症
 =ブルートウ症候群(他の原因による塞栓症も含まれる)
 =パープルトウ症候群(他の原因による塞栓症も含まれる)

正しい治療方針

痛みを除いてじっと数ヶ月待つ。早期の激痛に対する鎮痛法は坐骨神経ブロックが最も有効である。これにより微小循環が改善して痛みは消失し、紫色の部分は肌色に変わり、壊死になった部分と生き返った部分が明瞭になる(分界線形成:図3A)。この時点で壊死組織のみを切除し、切除創は自然に閉鎖されるのを待つ(2次治癒という)。この方法により通常は1~2本以内の趾壊死で大部分の足趾を救済することができる(図3B)。

誤った治療

最たるものは早期の足趾切断である。大部分助かるはずの足趾が、切断されては元も子もなくなってしまうわけで、歩行機能を障害する変形した足が残るだけである。発症後早期に切断をしたがる医師がいるが、その治療は受けるべきではない。

補 足

この原因は大動脈~中動脈の粥腫形成にあり、それはshaggy aortaやshaggy artery といわれる。血管の手術やカテーテル治療により粥腫が傷害されて足趾塞栓症が発生した場合はトラッシュフット(ゴミ箱の足)といわれるが、shaggy aortaが胸部大動脈にある場合は腎動脈へのコレステロール塞栓症が重大で、それによる腎機能障害は深刻である。これは自然発生よりも外科治療やカテーテル治療によって生ずる、いわゆる医原性腎機能障害である。

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  • 図1:粥腫塞栓症の腹部大動脈所見
  • 動脈硬化症にて死亡した患者さんの解剖図(ご家族の承諾取得)。大動脈を切開した内面と露出した写真。多数の粥状硬化巣(矢印)

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  • 図2A:発症直後の紫斑(急性期)
  • アテローム塞栓症の発症直後。特徴的な紫斑が足底部にみられる。

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  • 図2B:発症3ヶ月後(慢性期)
  • 発症3ヶ月後。小趾は壊疽、4趾は大部分壊疽。1~3趾は助かる。

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  • 図3A:微小循環改善により分界線形成
  • 発症後4ヶ月が経過し、分界線が形成された。

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  • 図3B:壊死組織の切除、自然閉鎖(2次治癒)
  • 壊死組織のみを切除し足趾の大部分が救済された。

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