血液透析シャント作成・シャントトラブル修復

透析用シャント造設手術は血管外科のトレーニングを受けた医師にとっては容易な手術ですが、そうでない場合には容易とは言えません。そのため近年は各国とも血管外科医が透析用シャント造設手術を行うようになっています。江戸川病院血管病センターでは新規のシャント作成以外にシャントトラブルにより透析できなくなった患者さんのシャント修復手術も行っています。
シャント不全に陥った場合、シャント修復手術は行われず、腕の上へ上へと作り直され、それが駄目になると反対の腕(利き腕)に造られ、同様の経過をたどって外シャントのままで生活されている患者さんもいます。この様な患者さんに対し血管外科手技を導入した修復手術では、容易に再利用できるようになりますし、さらには血管移植手技を用いることにより、あきらめられていた肘より下の位置に造ることも可能です。人工血管を用いるシャントは容易ですが、異常を発生する頻度が高いため、最終手段として実施します。これには動脈-静脈管シャント以外に動脈-動脈間シャントを作成します。

透析用シャントトラブルの原因には以下の点が挙げられます

  • シャント狭窄・閉塞
  • シャント流路の拡張による瘤化(こぶを形成する)
  • 手指の血行障害による潰瘍・壊疽 (図1,2)
  • 上肢腫脹
  • シャント人工血管の感染

いずれも適切な治療が行われれば再利用や同側前腕に新規作成が可能であり、再三のシャントトラブルで透析に支障のある方は血管外科による適切な治療を受けるべきです。以下にシャントトラブルと治療およびその治療の利点と欠点を表にまとめました。

シャント異常 治療法・修復法 利 点 欠 点
シャント狭窄 1)カテーテルで狭い部分の拡張
2) 手術で狭い部分を拡張
手術簡単
確実
再発・不確実
局所麻酔手術必要
シャント閉塞 1) 限局性閉塞ならば形成手術
2) 血管移植でシャント作成
 (1) 自己血管移植
 (2) 人工血管使用
 (3) 動脈間人工血管ループ作成術(図3)

3) 上腕に作り直す
4) 反対の腕に作り直す
手術簡単
不可能例なし/確実
長持ちする
簡単/局所麻酔
心臓負担消失
不可能例なし
手術簡単
手術簡単
不可能例あり

全身麻酔・血管採取
再閉塞率が高い
手術が比較的複雑
透析中薬剤注入不可
流量過剰/心臓負担
利き腕を使用
シャント静脈瘤 1) 瘤縫縮
2) シャント閉鎖
手術簡単
手術簡単
巨大ならば作り直し
他側に作り直し
手・上肢の異常 治療法・修復法 利 点 欠 点
手指潰瘍・壊疽 シャント流量過大
1) シャント縫縮
2) シャント吻合部末梢移行
3) シャント閉鎖/新規作成(図4)
手術簡単
手術簡単・確実
手術簡単・確実
不確実
不可能例あり
利き腕使用/不可能例あり
手への動脈閉塞
1) 閉塞動脈の再建(図3)
2) シャント血流制限
上肢の腫脹(はれ) 1) 中枢静脈カテーテル治療
2)中枢静脈手術再建
処置簡単
確実
不可能例あり・不確実
全身麻酔手術